PPPリンク処理(状態遷移図)(RFC1661)

 PPP状態遷移の概要を,図1に示す。システムを起動した後,LCPによってリンク確立を行う。このとき,リンク設定オプションのネゴシエーション(調整)も同時に行うが,すべてを行うのではなく,ネットワーク・プロトコルに依存しないものだけです。ネットワーク・プロトコルに関連するオプションは,各NCPで行う。リンク確立フェーズの次は認証フェーズで,認証フェーズに失敗するとリンク終了フェーズに移行する。
 認証フェーズは,省くことが可能。この後,使用するネットワーク層プロトコルのための設定を各NCPで行い,IPをはじめとするネットワークプロトコルが動き始める。次に,図1の各フェーズについて説明する。

(1)リンク停止(Link Dead)フェーズ

 このフェーズは,通信システムが物理的あるいは電気的に動作していない状態(例えば,モデムのCDが落ちているときなど)です。CD(Carrier Detect,キャリア検出)が上がり(ONになり)回線が接続されると,PPPはリンク確立フェーズに移行する。

(2)リンク確立(Link Establishment)フェーズ

 このフェーズでは,LCPの設定(Configure)パケット(設定要求・確認パケット)を双方向に交換する。お互いが,設定確認(Configure-Ack)パケットを受信および送信すると,リンクが確立した状態(LCP Open)となる。このフェーズでは,LCPパケットしか使用できません。その他のパケットは無視されます。
 なお,ネットワーク層プロトコル・フェーズまたは認証フェーズで,リンク設定要求(Configure-Request)パケットを受信すると,このリンク確立フェーズに戻る。

(3)認証(Authentication)フェーズ

 ネットワーク層プロトコルの前に,認証プロトコルを実行することができる。認証フェーズは省略可能ですが,実行するとすれば,リンク確立終了後,できるだけ早く行うようにしなければならない。どの認証プロトコルを使うかは,LCP設定オプションで前もって設定するが,認証プロトコルとしては,表1(PPPフレームの主なプロトコル値)に示したデータリンク制御プロトコルの中の,認証プロトコルがある。
 このフェーズでは,LCP,認証プロトコル,リンク品質監視パケットを実行することができ,これ以外のパケットは廃棄される。

(4)ネットワーク層プロトコル(Network Layer Protocol)フェーズ

 このフェーズでは,まず,各ネットワーク層プロトコルに対応したNCPがそれぞれ実行される。各ネットワーク・プロトコルは,NCPを実行した後でなければ有効とはならない。このとき,サポートされているプロトコルのパケットは廃棄され,サポートされていないプロトコルのパケットは,プロトコル拒否(Protoco卜Reject)される。
 このフェーズで使用可能なパケットは,LCP,NCP,ネットワーク・プロトコルのパケットです。

(5)リンク終了(Link Termination)フェーズ

 モデムのCD落ち(CD OFF),認証やリンク品質失敗,アイドル時間のタイムアウト,終了要求などによって,終了フェーズヘ移行する。LCPは,終了要求(Terminate-Request)パケットを送り,その確認(Terminate-Ack)パケットを受信すると,リンクがクローズ状態となり,物理層に切断を指示する信号を送る。リンクをクローズするときは,ネットワーク層にも通知して必要な処理をさせる。この時,NCPは何も処理する必要はない。また,終了要求パケット受信した相手方PPPは,終了確認パケットを送信後,一定の時間(Restart Timer/リスタート・タイマ。デフォルト3秒。設定可能)のタイムアウト後に,リンクを切断する。こうして,リンク停止フェーズに戻る。
 このフェーズでは,LCPパケットだけが受け付けられます。

PPPの状態遷移図(概要)
図3 PPPの状態遷移図(概要)



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