WAN用途も想定した10ギガビットの仕様

イーサネット技術は,用途がWANへと広がるにつれて,さらなる高速化が要求されるようになりました。現在,伝送速度が10Gビット/秒のイーサネット方式の標準化作業が進んでいます。今回は,完成に近づきつつある10ギガビット・イーサネットの標準仕様「IEEE802.3ae」について解説します。

 IEEE802.3aeは,既存のイーサネットと同じ形式のMAC(media access control)フレームを使うことで,相互運用を可能にしています。しかし,IEEE802.3aeはLAN用途だけでなく,WANへの適用も考慮している点でこれまでの仕様とは異なります。また,IEEE802.3aeは光ファイバー・ケーブルにしか対応せず,通信も全2重モードだけをサポートします。このほか,WWDM技術や波長が1550nm(ナノ・メートル=10億分の1メートル)の光信号など,新しい技術を採用しています。

伝送方法や光信号の波長で異なる7方式
 IEEE802.3aeには,「10GBASE-SR」,「10GBASE-LR」,「10GBASE-ER」,「10GBASE-SW」,「10GBASE-LW」,「10GBASE-EW」,「10GBASE-LX4」の7方式があります。これら7方式は,伝送方法(3系統)と光信号の波長(3系統)の組合わせで決まります。標準仕様の方式名称にある「-」(ハイフン)の後ろの文字列で組み合わせを判別できます(図1)。

10Gビット/秒の各種方式
図1 10Gビット/秒の各種方式

 伝送方式としては1本の光信号で伝送する「10GBASE-R」,10GBASE-Rを基にSONET/SDHとの整合性を確保した「10GBASE-W」WWDM技術を使って複数の光信号で伝送する「10GBASE-X」の3系統があります。10GBASE-Rと10GBASE-XはLANでの用途,10GBASE-WはWANでの用途を想定しています。
 利用する光信号の波長が異なる3系統は,850nmの短波長を使う「10GBASE-S」1310nmの長波長を使う「10GBASE-L」1550nmの長波長を使う「10GBASE-E」です。利用する光ファイバの種別と最大伝送距離は,10GBASE-Sがマルチモード・ファイバ(MMF)で82m,10GBASE-Lがシングルモード・ファイバ(SMF)で10km,10GBASE-EがSMFで40kmです。

伝送方式の違いで変わる伝送速度
 IEEE802.3aeのレイヤー構造はMAC層以下,_式未良層と接続する「RS」(reconciliation sublayer),▲如璽辛箙罎鯤儡垢垢襦PCS」(physical coding sublayer),ビット列をSONET/SDHフレームのOC-192に格納する「WIS」(WAN interface sublayer),づ疏符号に対応付ける「PMD」(physical medium attachment),ジ信号に対応付ける「PMD」(physical medium dependent)の各副層からなります(図2)。ただし,WISを利用するのはWANでの用途を想定した10GBASE-Wだけです。これら副層は、XGM供10 gigabit media independent interface), XSBI(10 gigabit sixteen-bit interface),MDI(medium dependent interface)というインタフェースでつながっています。

10Gビット/秒のイーサーネット方式のレイヤー構造
図2 10Gビット/秒のイーサーネット方式のレイヤー構造

 7方式すべてで使われるXGM兇蓮4本のパラレル・レーン(信号路)を備えています。各レーンは2.5Gビット/秒でデータを転送します。転送速度が速いため、接続距離は最大7cmほどに限定されます。
 XGM兇寮楝概離を延長するオプションが「XGM競┘ステンダ」です。二つの副層「XGXS」(XGM extender sublayer)とこれらをつなぐインタフェース[XAUI」(10 gigabit attachment unit interface)で構成されます。XGM競┘ステンダを使うと,接続距離は最大50cmほどに延長できます。
 いずれの方式もXGM蕎紊任蓮10Gビット/秒でデータを転送します。しかし,光ファイバ中の伝送速度は各方式で異なります。
 10GBASE-Rは,PCSで64B/66Bという符号化方式を使います。2ビット分の制御情報を追加するため,伝送速度は10Gビット/秒の64分の66倍となり,光ファイバ中では10.3125Gビット/秒となります。
 10GBASE-Wの場合,XGM蕎紊鯲れる10Gビット/秒のうち実データは9.29Gビット/秒程度です。PCSで64B/66Bで符号化した後は9.58464Gビット/秒となりますが,WISでSONETフレームに格納するため,光ファイバ中では9.95328Gビット/秒となります。
 WWDM技術を使う10GBASE-LX4は,PCSで8B/10Bの符号化方式を使います。4本の光信号それぞれ伝送速度は8分の10倍となり,光ファイバ中を3.125Gビット/秒で伝送します。このため,4本の光信号を合わせた伝送速度は,12.5Gビット/秒となります。

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