2重リングを使うRPRとイーサネットの今後

アクセス回線の高速化が進む一方で,中継回線の大容量化も求められています。10Gビット・イーサネットは有力な技術ですが,通信事業者の基幹網で使うには,高い信頼性も必要です。そこで,障害回復機能を重視した新しい伝送技術「RPR」の標準化が始まりました。 に転送できます。

 RPRはIEEE802.17が標準化を進めています。IEEE802.3が標準化を進めるイーサネットとは異なる伝送技術です。しかし,MACアドレスをアドレスとして使う点や,符号化などでイーサネットとの共通点もあります。イーサネットとの高い親和性を実現しつつ,既存のイーサネットにはない信頼性を確保することを目指しています。RPRの標準化は2003年3月ごろ完了する予定です。

RPRはSONET/SDH並みの高い信頼性が目標
 RPRネットワークは,2重リング構成が基本です。FDDISONETSDHでは,2重リング構成で信頼性を確保する方法があります。RPRの2重リング構成もまた,信頼性をするためです。断線などの障害が発生すると,障害が発生した箇所の両端の装置内で,2本のリング間を折り返します。切り替え時間は,SONET/SDHは2本のリングのうち一方を予備専用に使いますが,RPRは2本リングで同時にデータをやりとりできます。(図1)

RPRのリング構成と障害発生時の動作
図1 RPRのリング構成と障害発生時の動作

 リングの長さは最大2000km,伝送速度は最大40Gビット/秒以上を目指しています。1対の2重リングで構成する伝送装置は,最大64台または256台を想定しています。
 RPRは,MACフレームを使ってデータをやりとりします。ただし,イーサネットのMACフレームとは形式が異なるため直接つなぐことはできません。イーサネットとつなぐには,ブリッジやルータが必要です。物理層の仕様は,当面は既存のSONET/SDH,またはイーサネットを転用します。伝送速度は,SONET/SDHで2.5Gビット/秒以上,イーサネットで1Gビット/秒以上となります。
 RPRのMACフレームには,.如璽薪疏に使うフレームと,▲螢鵐阿旅柔情報や障害検知など制御情報の転送に使うフレームの2種類があります。データ転送のフレーム・サイズは,最大9216バイトを想定しています。

高速化・長距離化技術の取り込みは容易
 1年間にわたってイーサネットに関する技術を見てきました。この間にもアクセス回線のブロードバンド化は大きく進展し,イーサネットの採用も進んでいます。さらに,標準化間近の10Gビット/秒の仕様,新たに標準化作業が始まったEFMやRPRなどがイーサネットの適用範囲を広げようとしています(図2)。

今後のイーサネットの動向
図2 今後のイーサネットの動向

 今後のイーサネットの大きな流れの一つに,高速化・長距離化への対応があります。今後は40Gビット/秒,100Gビット/秒へとさらなる高速化が進展するでしょう。高速化の過程でイーサネットは,当初のバス型の方式で不可欠だった「CSMA/CD」を捨てました。これによってイーサネットには,高速化・長距離化の制約がなくなりました。同時に,最新の高速化・長距離化技術を取り込みやすくなりました。このためイーサネットの高速化は,伝送技術そのものの高速化と並行して進むでしょう。
 もう一つの大きな流れは,信頼性,QoS,セキュリティといったニーズへの対応です。これまでも,例えば,VLANタグの追加といったフレーム形式の拡張で部分的に対応してきました。ただし,異なるイーサネット方式の間で相互接続性を確保するため,フレーム形式の大幅な変更はしてきませんでした。
 今後さらにニーズが高まれば,EoMPLSやRPRのようにイーサネットと異なる別方式で,標準化の動きがでてくるかもしれません。
 以上は,従来の延長線上で考えられる動きです。しかし,未来の予想は難しく,従来とは全く異なる技術が登場してイーサネットに大きな影響を与えるかもしれません。その時には,改めての解説が必要になるでしょう。

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